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【Vol.3】低学年という存在〜学習編②「字が汚い」という悩み~

前回、「家庭学習に集中して取り組めない」というお悩みをピックアップし、子ども特有の集中力についてご紹介しました。

今回は、「字が汚い」というお悩みについて、低学年の子どもの特性を踏まえた声掛けの例をご紹介します。


低学年という存在〜学習編②「字が汚い」という悩み~

英進館 花まる学習会

『字が汚い』と悩むのはみんな一緒!

「字が汚い」というお悩みは、圧倒的に男子の保護者(特にお母さん)が抱えることが多いように感じます。「書ければいい、読めればいい、とにかくサッサと書き終えたい」という「ザ・男子」とでもいうべき感覚は、親としては受け入れ難い場合があります。

興味深いのは、教師の目から見て学年相応に充分に読みやすく書けている字に対しても、「こんなに字が汚いのはうちの子だけですよね?」という保護者の方がとても多いことです。「○○ちゃん(くん)はあんなに上手に書けているのに…」と、お友達やきょうだいとの比較で不安になる方も多いようです。確かに時に驚くほど字の綺麗な子もいますが、それはレアケースだと思って構いません。

視野も狭く手先の器用さもまだまだ発展途上の子どもたちは、大人の書く字と比べれば稚拙なのは当たり前です。

まずは「読めればOK」と、基準を思い切り下げてみましょう。そのうえで、以下のように声をかけると少しずつ上達していくでしょう。


字を書く土台を整えてあげる

文字の書き取りに限らず、学習の礎として重要なのは「正しい姿勢」「正しい鉛筆の持ち方」です。

これを身につけることができれば、余計な力みがとれ、将来的に長時間の学習にも耐えられる学習体力につながります。課題に取り組む際には、背筋がまっすぐ伸びているか、鉛筆の握り方は正しいか、などをまずみてあげてください。

この時に、「素晴らしい姿勢だね!」「あともう少し背中が伸びると、もっと上手な字が書けそうだね!」などいい点も修正点も前向きに声を掛けてあげると、やる気が出て結果的に上手な字を書こうという気持ちにつながりやすいでしょう。


とにかく褒める

「なんでこんなに字が下手なの!」と怒鳴られて、「よし、もっと字が上手になるように頑張るぞ!」と前向きに取り組める子どもは、なかなかいません。怒られるよりも褒められた方がやる気が出る、というのは大人も子どもも同じでしょう。

褒めるときのポイントは、どこが上手に書けたのかということを具体的に伝えてあげる、ということです。

「マスの中にバランスよくおさまっている」「忘れがちなトメ・ハネ・ハライがしっかり書けている」などをできるだけ具体的に褒められると、「上手な字」の基準が子どもの中でも明確になり、次からもそれを再現しようとします。

下手な字を何度も何度も書き直しさせるよりも、少しでも上手に書けた字をたくさん見つけてとにかく褒めることで、子どものモチベーションも上がり字も上達していきます。

もしも余裕がある時には、上手な字に花まるをつけてあげたりスタンプやシールを貼ってあげたりすると一層喜ぶでしょう。


「ぼく、この字得意だから!」

ここで、英進館の教師が低学年の生徒に使っている裏技のご紹介です。それは、下手な字を敢えて褒める、というもの。

例えばまだひらがなを覚えたての1年生にとって、「す」「な」「ね」など、どうしてもバランスをとるのが難しい文字があります。客観的に見ればバランスの崩れためちゃくちゃな字でも、まずは頑張って書いたという事実を褒めます。そしてその字のなかでどこか1ついいところを見つけて、できるだけ大げさに、しかし真剣に褒めます。「このカーブの部分がめちゃくちゃ綺麗だ!」「濃くかけていて読みやすい!」など、なんでもいいのでとにかく1つ、いいところを見つけてあげます。

そうすると、「まあね、ぼくこの字得意だからね~」と、自分からより上手に書こうとすることがよくあります。「ん」の字を褒められたことが嬉しくて、翌週の授業に「ん」だけをびっしり練習したノートを持ってきて披露してくれた子もいました。

ここで大事なのは、本当に心から感心したように見せる演技力です。

低学年の子どもにはおだての効果は絶大です。ましてや大好きな保護者の方に褒められたら、嬉しさと誇らしさで天にものぼる気持ちでしょう。(逆に高学年になると、「は?馬鹿にしているの?」と冷静に返されるようになり、もうこの手は使えません。。)


字が汚いことは悪いことか

ここまで、「字を上手に書くこと」について紹介してきましたが、字の綺麗さにこだわりすぎると、思わぬ落とし穴に落ちてしまうことがあります。

それは字を書くスピードです。

高学年になって板書量が増えたときや、時間との戦いでもある入試の際などには、字の綺麗さと同じかそれ以上にスピード感をもって手を動かすことができるかどうかが大事になってきます。

鉛筆を握って手を動かすことを運筆といいますが、運筆の力は運動能力です。低学年の頃からの訓練で、スピード感をもった筆の運びを鍛えることができます。

速さを気にするあまり雑すぎて読めない字というのはもちろんいけませんが、字の綺麗さにこだわりすぎてスピードが上がらないのも高学年以降では致命傷になりかねません。読みやすさとスピード、どちらも適度に両立できるのが望ましいでしょう。

花まる学習会では、年長は「ひまわり」、小1~小3は「あさがお」という教材を使って、楽しく運筆の力を鍛えます。例えば年長さんが線をなぞるときには「はみだしても大丈夫だからテキパキのリズムでなぞってみよう!」と声をかけています。読み書きとの出会いの時期の声掛けが、子どもの学習観の土台となります。子ども達には高学年以降でどんな力が必要になるか、ということを念頭にプロの視点で指導に当たっています。


以上、今回は「字が汚い」というお悩みについて、低学年の子どもの特性を踏まえた声掛けの例をご紹介しました。

次回は「やり直しをしたがらない」というお悩みについての記事をお届けいたします。どうぞお楽しみに。